風は囁く「君と輝きたいから」

「ガタニーニというヴァイオリン作家が作ったヴァイオリン。1758年に作られたヴァイオリンなの」

――小百合さんが詩月さんの号泣動画のことで、電話してきた時……何て言ったっけ

俺は思い返そうとした。


「ガダニーニは各地を転々として、作風を変えながらヴァイオリンを作った職人で、彼の作品は鑑定が難しいことで有名なのよ」


「各地を転々? ヴァイオリンは腰据えて、ゆっくり作る楽器だよな。普通は」


「本当はそうなんだと思う。でも、何故かガタニーニは放浪の製作者と呼ばれるくらい各地を転々としていた職人なの」


「せっかちな人やな」


「そうね。変わってるわよね。1758年に作られた彼の作品は本来、評価が低いらしいんだけど、周桜くんの弾いているヴァイオリンは……コレクターや専門家の間で、別格だと言われているの」