「詩月さんはローレライなんかじゃない」

自分の叫び声が、いつまでも頭の中で響いていた。

心のこもらない営業スマイルを何度も繰り返して、その日の仕事を終えた。

頑張っている、頑張ったと1日を振り返る。

こみ上げてくるのは、ただ虚しさ。

宿舎に帰る途中、ふらり入ったコンビニに、Xceon(エクシオン)のポスターが貼られいた。

真っ先に、目に入ってきたのは、詩月さんがヴァイオリンを弾く姿。

缶珈琲を3本と、パンを3個買ってコンビニを出ると、昴が息を切らして走ってきた。


「マ、マネジャーが……病院に担ぎ込まれたってっ」

捨てられた子犬のような顔で伝える。


「何で……」


「自殺未遂やって」


「桃香さんが!?」

気丈な人だと思っていた。
強面のスポンサーやプロデューサー、大物タレントなどにも、けっこうズバズバ話す逞しい人だ。