――僕が? おかしいんじゃないか? そのスポンサー。どう勘違いしたら、そんな風に思うんだ?


サラサラと小さな音がする。


「詩月さんさ。フローラ化粧品の口紅CMでXCEON のメインで、ヴァイオリン弾いてるじゃん。
春バージョンも夏バージョンも。
あれを見て、XCEON のメンバーだと思い込んでいて……」

昴の顔も空の顔も、悲壮感MAXだ。


「えっと……詩月さんがコンサートでヴァイオリンを弾かないなら、XCEON のスポンサーを降りるって、事務所に怒鳴りこんできて……」

昴は俺が電話で話している側で、何度もため息をつく。


「マネジャーには、スポンサーは説得するから、詩月さんには話すなと言われたんだけど……。
スポンサーが、かなり大物の頑固な人で、社長も動いているんだけど、なかなか厳しいみたいなんだ。
コンサート近いし……」