風は囁く「君と輝きたいから」

緒方さんの俯いた気まずそうな顔。


「おばあちゃん自慢のヴァイオリニストの演奏が、ステキすぎて……つい」


「おばあちゃん!?」


「リリィのお孫さんなんだ、千住……」


「小百合、千住小百合」


「すまない……」


「あんな大胆なアピールをしたのに、名前も覚えていないなんて」

悔しそうに言ってみる。


「周桜の頭の中は、おたまじゃくしでいっぱいだからな」


「ひどいな」


「弾いていらっしゃいよ。リリィさんの十八番(おはこ)『懐かしい土地の思い出』」


「ああ……」

周桜くんは緒方さんの言葉に、送り出されるように、ピアノの前に進んだ。


「律儀だよな。周桜はリリィが亡くなって以来、月命日には必ず『懐かしい土地の思い出』を弾くんだ」


「リリィさんの席には、いつもユリの花が生けてあるの。周桜くんが絶やさないようにしてるの」

緒方さんは、ヴァイオリンを弾き始めた周桜くんを優しい眼差しで見つめている。