風は囁く「君と輝きたいから」

「コンクール荒らしって聞いてるけど……」


「負けた奴が負け惜しみを言ってるだけだ。文句があるなら勝ってから言えばいい」


「やっぱり、イメージが違う」

言葉とは正反対、周桜くんは澄まし顔だった。


カフェ・モルダウ。

扉を開けると、涼やかな風鈴の音が響く。

珈琲の芳醇な独特の薫りが、広がる。

中央に、澱と置かれた黒塗りのグランドピアノ。

音楽科の学生が曲を奏でている。


「周桜、待っていだぞ」


窓際の席。

黒縁眼鏡をかけた優等生風の男子が、手を高々とあげている。

学内オーケストラのコンサートマスター、安坂さんだ。

その向かい側には緒方郁子さんが座っていた。

周桜くんはさりげなく、自然に、わたしを席に導いた。


「あ……」


「初めてではないわね。Nフィルの楽屋前で会った」