風は囁く「君と輝きたいから」

「ガタニーニの曰く付きヴァイオリン『シレーナ』をいとも簡単に弾いて、演奏者も聴き手も惑わせるローレライのくせに……」


「あなたに僕の何がわかるんだ!」

詩月さんは言いながら、シャツのボタンに手を掛けた。

1つ、また1つ、詩月さんはゆっくりと、シャツのボタンを開けていく。

詩月さんと妹尾さんに向けられる視線が痛い。

詩月さんは、鳩尾あたりでピタリ手を止め、一気に胸元をはだけた。


「あっ……」

俺たちは息を飲む。

画面から、ひきつったような短い悲鳴が幾つも聞こえた。

詩月さんの胸にある幾つもの傷痕。

肩甲骨下、まだガーゼを当てた手術痕。

左胸に一筋引かれた、皮膚がまだ薄く赤く変色したままの生々しい傷痕。

胸の中央を割り、長く鳩尾にまで達した薄い1本線の大きな傷痕。

腕には、幾つも鬱血した赤紫色の点滴の痕。