風は囁く「君と輝きたいから」

ドキドキした。


「今日は走らせるつもり?」

女性の唖然とした顔。


「そんな辛そうな暗い顔をして、曲を奏でても楽しくないでしょう?」

詩月さんの言葉に、女性の表情が強張る。


女性の顔、見たことのある女性だった。

「この人、Nフィルの……ヴァイオリニストちゃう?」

昴がボソッと呟く。


「妹尾さん。音楽は『音を楽しむ』って、漢字を書くんだ」

詩月さんは、妹尾という女性に向かって明るく言う。


「辛くても悲しくても『音を楽しむ』心で曲を弾くんだ。
言葉や行動だけでは、人に思いは伝わらない。
『心』だ、『音楽は心』で奏でるんだ」


「……知ったようなことを言うのね、偉そうに。
大した努力もせずに、親の七光りや持って生まれた天分で弾いているだけのくせに」

詩月さんと妹尾さんの会話。
妹尾さんの顔は、ひきつっているように見える。

顔を歪ませ、声を震わせている。