はぁ、はぁ、と息をする翠。
翠に近寄ろうと、一歩踏み出そうとした時、ポケットの中の携帯が鳴った。
「もしもし…あぁ、分かった。今行く」
電話の相手は、迎えに来た同僚から。
こんな状態のまま仕事に行きたくない。
「翠、俺仕事行ってくるから。あいつらのこと頼むな」
翠の頭を撫でようと手を伸ばした時、翠の体がビクッと震えたのが分かった。
…マジで嫌われたな、俺。
「…ごめんな」
それだけ言って、俺は手を引っ込めた。
仕事の荷物と宿泊用の荷物を持って玄関へ向かう。
「翔にぃ、なんか怒鳴り声が聞こえたんだけど…何かあったの?」
靴を履いていた時、階段から降りてきた陽が、俺を心配そうに見た。
「あー、俺があの部屋見ようとしたから翠が怒っただけだよ」
俺の言葉を聞いた瞬間、陽の目が見開いたのが分かった。
あぁ、これで俺は陽にも嫌われたな。



