さて。
「お袋、恋に謝ってくれるよな?」
目の前で、蒼が何もしてやれなかったと恋のために泣いたんだ。
この様子を見て、謝らない奴はいないだろ。
お袋は恋のほうに向き直ると、ゆっくりと口を開いた。
「恋、ごめんなさい。これで許してもらえるなんて思ってないけれど…でも、お母さん、これからは本当にちゃんと向き合って行きたいと思ってる…今まで本当にごめんなさい」
お袋はそう言って深々と頭を下げた。
「顔あげて、母さん」
恋はお袋の目の前にくると、同じ目線の高さになるようにしゃがみ、優しい笑みを浮かべた。
「俺、母さんのこと嫌いじゃないよ。ただ、苦手なだけで。
昔のことを恨んでるわけでもないし。
今になって、あの時俺も、素直な気持ちをぶつければよかったんだって思うよ」
「恋…」
「母さん、ここから始めようか。親子としての一歩。きっと向き合える……だって、家族なんだから」
そう言って恋が笑いかけると、お袋は泣き出した。
その様子を見て、俺はふぅ…と安堵のため息を着く。



