「じゃ、じゃあ…恋にぃはそんな扱いをされても、俺たちの面倒を見てくれてたってこと…?」
「あぁ」
翠の質問に、はっきりと答えてやる。
これは嘘なんかじゃない。本当のことなんだからな。
「……んで…」
「蒼…?」
蒼は拳をぎゅっときつく握りしめ、体を震えさせていた。
そして。
「なんでずっと黙ってたんだよぉおっ!!」
恋の胸ぐらを掴み、壁にドンっと押し付けた。
「蒼っ!!」
「蒼にぃっ!!」
蒼を止めようとする親父や弟たちに目もくれず、恋を掴む手を離さずに叫ぶ。
「なんで言ってくれなかったんだよ!!俺が…俺が笑ってた時もお前はずっと苦しんでたってことかよっ!?」
「っ……」
「どうしていつも一人で抱えようとすんだよ!どうして辛いって言わねぇの!?どうして苦しいって、言わねぇんだよっ……どうして……」
「蒼…」
「なんで俺っ……いつも恋を救えないんだよっ……うっ……」
スルリと力なく恋を掴む手を離し、蒼は泣き崩れた。
蒼はいつだって、恋の力になりたいと思ってる。
支えになってやりたいとずっと思ってきた。
なのに。
自分の気づかないところで、恋が苦しんでいたなんて。
蒼にとってそれは、とても悔しいこと。
そして、どうして自分を頼ってくれなかったんだという、寂しさ。
蒼、お前が泣く必要はないんだ。
お前は十分、兄思いの優しいやつだよ。



