俺、兄貴になりました③




「じゃ、じゃあ…恋にぃはそんな扱いをされても、俺たちの面倒を見てくれてたってこと…?」


「あぁ」



翠の質問に、はっきりと答えてやる。

これは嘘なんかじゃない。本当のことなんだからな。




「……んで…」


「蒼…?」




蒼は拳をぎゅっときつく握りしめ、体を震えさせていた。



そして。




「なんでずっと黙ってたんだよぉおっ!!」


恋の胸ぐらを掴み、壁にドンっと押し付けた。



「蒼っ!!」


「蒼にぃっ!!」




蒼を止めようとする親父や弟たちに目もくれず、恋を掴む手を離さずに叫ぶ。



「なんで言ってくれなかったんだよ!!俺が…俺が笑ってた時もお前はずっと苦しんでたってことかよっ!?」



「っ……」



「どうしていつも一人で抱えようとすんだよ!どうして辛いって言わねぇの!?どうして苦しいって、言わねぇんだよっ……どうして……」



「蒼…」



「なんで俺っ……いつも恋を救えないんだよっ……うっ……」




スルリと力なく恋を掴む手を離し、蒼は泣き崩れた。


蒼はいつだって、恋の力になりたいと思ってる。


支えになってやりたいとずっと思ってきた。



なのに。


自分の気づかないところで、恋が苦しんでいたなんて。



蒼にとってそれは、とても悔しいこと。


そして、どうして自分を頼ってくれなかったんだという、寂しさ。



蒼、お前が泣く必要はないんだ。


お前は十分、兄思いの優しいやつだよ。