俺、兄貴になりました③

side 翔輝



みんなが寝静まった後、俺は1人考えていた。



恋の話は、驚くことばかりだった。



あいつは、蒼にすら真実を話さずに、ずっと1人で苦しみを抱え込んでた。



気づいてやれなかった。


それが悔しくて仕方ない。



恋がお袋と話さないのは、ただ嫌いだからだと思ってた。



なのに。



昔お袋にあんなことされて、急に話しかけられるようになったら、誰だって戸惑うはずだ。



普通なら、過去を忘れて仲良くしましょうなんてことを言われたら腹が立ってもおかしくない。


そうですね、なんて言えるはずがない。

ふざけんなって、言いたくもなる。




一人で悩んで、一人で抱えて、苦しんで。

それでも恋は、弟達を守ってきた。




今日、はじめて分かった。


恋が兄弟の中で一番人に甘えることが苦手なのも。

頼らずに一人で解決させようとするのも。


全部、小さい頃から他人の愛情を受け取ってこなかったからだ。



……これは、お袋が悪いよな。



真実を知って込み上げてくるのは、お袋への怒り。



これ以上、恋を苦しめてたまるか。




俺はある決意をして眠りについた。