「恋、お前ずっとそれを一人で抱えてたのか」
「っ……」
「ごめんなぁ、すぐに気づいてやれなくて…」
兄貴の震えた声が聞こえてくる。
「なぁ、恋。お前がどんなにお袋から嫌われてようと、俺は絶対嫌いになんかならねぇ」
兄貴……。
「俺はずっとお前の味方だって誓ってもいい。だから、一度だけちゃんとお袋と話してみろ」
「え……」
兄貴は俺を腕の中から解放すると、真っ直ぐ俺を見て、優しく笑う。
「そんで、やっぱり嫌いだって言われたら、また俺んとこに来い。俺がそれ以上にお前を必要としてやるから」
兄貴の優しい笑顔を見て、また涙が零れた。
『翔ちゃんは全部受け止めてくれるよ』
凛ねぇ。
凛ねぇの言う通りだったよ。
兄貴は、俺を真っ正面から受け止めてくれた。
俺、頑張ってみるよ。
兄貴が真っ正面から俺を受け止めてくれたから。
俺も、真っ正面からぶつかってみるよ。
「兄貴……今の発言ホモっぽくてキモイ」
「お前っ…俺がせっかく慰めてやろうとっ…!!」
「ウソウソ。ありがとう、兄貴」
大丈夫、俺は進んでいける。
兄貴が俺の味方だと言ってくれたから。
必要としてくれる人がいるから。
前に、進もう。



