俺、兄貴になりました③




「母さんの、ことなんだけど」


「おう」


「俺、昔から…母さんに嫌われてるんだ」




母さんに優しくされたことなんて、ひとつもない。



褒められたこともなければ、笑ってくれたことすら一度もなかった。



テストで良い点をとっても、リレーで一位になっても、自分の絵の作品が選ばれても、



長男だから。

私の子だから、出来て当たり前。



それが母さんの口癖だった。





そのくせ、蒼が何かをすると、これでもかというくらい褒めまくった。


他の弟にも同じ。


俺だけが、母さんに認められることはなかった。



それでも、俺は弟を憎いだとか嫌いだと思ったことは一度もなかった。



仕事で忙しくてあまり帰って来ない母さんの代わりに、俺が守ってやんなきゃって、思ってたから。


唯一、俺を必要としてくれてる家族だったから。