俺、兄貴になりました③




弟達が風呂で騒いでいる間、俺は1人早めに上がって、フロアの椅子に腰掛けていた。




「恋くん?どうしたの?」



声がした方を見ると、お風呂上がりで肩にタオルをかけた凜ねぇがいた。


すごいよね、俺と蒼を一ヶ月で見分けられるようになったんだから。


そういう、人を真っ直ぐ見てくれるところ、兄貴にそっくりだ。




「早いね、みんなはまだお風呂?」


「そう。風呂場で騒いでる」


「うわー、想像つくなぁ。楽しそう」




ふわっと笑う凛ねぇにつられて、俺も少しだけ頬を緩めた。




「恋くん、何か悩んでるの?」



その言葉に、胸が一度だけ大きく鳴った。



「え…」


「当たり?なんだか思い詰めた顔してるから」




流石、兄貴の奥さんだよね。


人のことよく見てる。




「私じゃ話しを聞いても、何も力になってあげられないけど…翔ちゃんになら、話してもいいんじゃないかな」




兄貴に…?




「翔ちゃんなら、喜んで聞いてくれると思うよ」




でも、兄貴は聞いてくれるかな。


俺の話。




でも誰かに聞いてもらわないと、もう俺の心が限界なんだ。



苦しくて、しょうがないんだ。




「兄、貴……聞いてくれる、かな…」


「大丈夫。翔ちゃん、みんなのこと大好きだから。もう、奥さんの私が妬けちゃうくらいだよ」



ポンポンと、涙を堪える俺の背中を優しく叩いてくれる。



「翔ちゃんは、全部受け止めてくれる。だから、話してみて」




それから凛ねぇは、待っててねと言って歩いて行った。



きっと、兄貴を呼びに行ったんだ。




兄貴…。



もう俺には、どうしたらいいか分からない。



もう限界なんだ。



助けて…。