弟達が風呂で騒いでいる間、俺は1人早めに上がって、フロアの椅子に腰掛けていた。
「恋くん?どうしたの?」
声がした方を見ると、お風呂上がりで肩にタオルをかけた凜ねぇがいた。
すごいよね、俺と蒼を一ヶ月で見分けられるようになったんだから。
そういう、人を真っ直ぐ見てくれるところ、兄貴にそっくりだ。
「早いね、みんなはまだお風呂?」
「そう。風呂場で騒いでる」
「うわー、想像つくなぁ。楽しそう」
ふわっと笑う凛ねぇにつられて、俺も少しだけ頬を緩めた。
「恋くん、何か悩んでるの?」
その言葉に、胸が一度だけ大きく鳴った。
「え…」
「当たり?なんだか思い詰めた顔してるから」
流石、兄貴の奥さんだよね。
人のことよく見てる。
「私じゃ話しを聞いても、何も力になってあげられないけど…翔ちゃんになら、話してもいいんじゃないかな」
兄貴に…?
「翔ちゃんなら、喜んで聞いてくれると思うよ」
でも、兄貴は聞いてくれるかな。
俺の話。
でも誰かに聞いてもらわないと、もう俺の心が限界なんだ。
苦しくて、しょうがないんだ。
「兄、貴……聞いてくれる、かな…」
「大丈夫。翔ちゃん、みんなのこと大好きだから。もう、奥さんの私が妬けちゃうくらいだよ」
ポンポンと、涙を堪える俺の背中を優しく叩いてくれる。
「翔ちゃんは、全部受け止めてくれる。だから、話してみて」
それから凛ねぇは、待っててねと言って歩いて行った。
きっと、兄貴を呼びに行ったんだ。
兄貴…。
もう俺には、どうしたらいいか分からない。
もう限界なんだ。
助けて…。



