俺、兄貴になりました③




母さんは、小さい頃から俺に厳しく当たってきた。



長男だから、それは仕方ないと思ってきた。


だけど蒼や弟達には、いつだって優しい笑顔を向ける。



俺に笑いかけるなんてことは、一度もなかった。



そのうち、長男だから厳しいんじゃなくて、俺が嫌いだから厳しくするんだってことに気づいた。


出来の悪い長男だから、母さんはきっと嫌いになったんだ。




「蒼、俺は平気だから」


「……分かった」




くるりと俺に背を向けて、蒼は母さんの元に向かった。



蒼が話しかけた瞬間、母さんの目が大きく見開いて、そこから大粒の涙が零れた。


そして二人で笑いあって話す様子を、俺は一人離れたところで見ていた。




よかった。


母さん、やっと笑ってくれた。




俺と話すと、あんな風にはいかない。


母さんは俺と話す時は、眉間にシワを寄せるから。



蒼と話すようになった母さんは、まるで別人のように明るくなった。


何かに吹っ切れたように。




母さんを取り囲む弟達。


それを外から見る俺。



俺は、あの中に入ってはいけない。


あの中に入ったら、一瞬にして崩れてしまうから。