俺、兄貴になりました③

side 恋



俺は母さんが苦手だ。


嫌い、ではなくて、苦手。




ただ、接し方が分からない。


今までほとんど放ったらかしだったし、たまに会っても話さなかったから。



それが急に、旅行でホテルに向かう車の中で話しかけられたって、なんて返せばいいか分からない。



嫌いだから返事をしない、とかじゃない。


ただ、分からなかっただけだ。




「恋、俺もお前が母さんと話せるようになるまで話さないから」




途中で寄ったパーキングで蒼に言われた。


蒼は前までは母さんを嫌っていたけど、今はそうじゃない。



蒼は普通に母さんと会話ができる。

母さんだって、蒼となら普通に話せるんだ。


なのにそれをしないのは、俺が1人にならないように側にいるっていう、蒼の優しさ。



だけど、俺のせいで蒼まで会話を止める必要はない。



母さんは俺たちに嫌われてるって思ってるはずだから。



それは違うんだよって、分かってほしい。


だから。



「蒼、お前は母さんと話してやって」



夕食の時に、そう話した。




「でも…」


「いいんだ。このままじゃ、母さんが可哀想だから。母さんに嫌われるのは、俺だけでいい」