リナリアの王女2

 あれから他愛もない話しをグレンさんとしていたら、あっという間に夕食の時間になった。
今の状況で唯一、自然体で話す事が出来るのがグレンさんが相手だからこそこんなに時間が経つのが早く感じるのかもしれない。

『もう夕食の時間ですね。こちらに夕食を運ばせますか?』

あの広いダイニングで食べるのは些か寂しい気もする。
だったらここで夕食を食べた方が良いかもしれない。

「はい。ここで食べます」
『ではこちらに運ぶように言いますね』
「あ、あの!グレンさんも良かったら一緒に食べませんか?」
折角一緒にいるのだから、夕食も一緒が良い。
何より、私だけ夕食を食べるというのも申し訳ない。

『私もですか?ですが・・・流石に私がエリーゼ様と一緒に夕食を食べるというのは・・・』
「私の護衛についているから、離れるわけにもいかず仕方なくって事で良いじゃないですか!」
グレンさんは少し考え、
『幸い今日はほとんどの者がパーティーの手伝いに行っていますし・・・分かりました。ご一緒させて下さい』

私が無理に頼んだのに、グレンさんは私の我儘をなかったように振る舞い、あたかも自分から提案したかのように言ってくれる。
本当にここの人達は私には勿体ないくらい優しい。

グレンさんと食べる夕食はとても楽しかった。
クラウドと食べる時は全く会話がないわけではないが、食事中のマナーとして会話も多い方ではなかった。
グレンさんは私が落ち込まないように笑えるような話しを色々してくれたし、逆に覚えている事だけでも良いからと私の世界の事についても聞かれた。
サラちゃんも初めの頃は私の元の世界について聞いてきた事があったが、私が少しずつ忘れていってる事を話してから気を遣ってか聞いてくることはなかった。
もう大分忘れてきてしまっているが、思い出しながら少しずつ語ると、グレンさんは興味深そうに話しを聞いてくれた。
元の世界との決別を決めたはずなのに、こうして元の世界の事について話していると帰りたいと思う気持ちがどうしても湧いてきてしまう。
それさえもグレンさんには分かってしまうようで、


『元の世界に帰る事は出来ませんが、無理に全てを断ち切る必要はないと思いますよ。覚えているうちはその思い出を大切にしてあげて下さい』



と言ってくれた。