『これでクラウド様が正式に国王ですね』

私とサラちゃんは今朝クラウドに言った通り二階からクラウドの戴冠式を見ている。
私はもし誰かに会ってしまった時に困らないように、お城の人達に挨拶した時と同じドレスを着ている。
サラちゃんはこの後パーティーで忙しい為、戴冠式だけ私と一緒にいてくれて、パーティー中はグレンさんといる事になった。

色々な人に迷惑を掛けているのに、結局今日この日まで誰一人私を責める事はなかった。
お城の人達でさえ『仕方ない』と笑って済ましてしまった。
きっと笑い事ではないのだろうけど、クラウドやグレンさんが了承をしたのならば、という感じだろう。


「クラウド・・・皆に慕われているのね」


一階にいる人皆からの歓声。
その声の大きさ、そして顔からは喜びが伝わってくる。

『クラウド様は積極的に国民と関わる場を設けたりしておりますから、国民の信頼は厚いのですよ』
「そう・・・」

何だか余計クラウドが遠い人のように思えてしまう。
こんな誰もが認める素敵な人が、私の事を長年想ってくれていたなんて信じられない。


いや、信じたくないんだ。


優しくて、国民から信頼されている完璧な国王が、私の事を幼い時から一途に想い続けている。
そんな現実が事実でなければどんなに良いか。
その想いに、周りからの期待から逃げ出したいんだ。

ただの異世界人、そんな立場になれたらどんなに楽か。

そんな考えが止まらない。
そしてそんな考えしか出来ない事に対して自己嫌悪に陥る、そんな悪循環を繰り返して、全く前に進めていない。