「やるよ」


人気の無い教室に、あたしの声が響く。

放課後の教室は授業中の賑やかさは無く、真夏という季節のお陰で暑さを増長する蝉の鳴き声と、体育会系の部活の活気のある掛け声だけが、耳障りな程に聞こえている。

そんな中、圭子と由香は見張りとして教室の入口に立っていた。

陽菜(ひな)の机を取り囲んでいるのは亜由美と千春、そしてあたし。

みんな満面の笑顔で、あたしの言葉に頷いた。

その光景だけを見れば、仲良しグループが放課後の教室で、親睦を深めているように見えるかもしれない。

若しくは好きな男子の机を囲み、和気藹々と盛り上がっているように見えただろう。

しかし、これからあたし達がしようとしていることを知れば、『今の子は何を考えてるか理解らない』『どんな育て方をされたんだ?』などと、口を揃えて言うはずだ。

だって、あたし達がしようとしていることは、まさに『血も涙もない』人の道を外れたことだから――