都会でもない山奥でもないごく普通のありふれた町。
住むには快適だけど、遊ぶには物足りない。
そんな町で私は育った。

思春期の私は、この町が嫌いだった。
この町には何もない。
絶対に上京しよう、心に決めていた。

そんな中でも学校は楽しかった。
友達は大好きだったし、何よりリョウが大好きだったから。

「よっ」

右手を上げてリョウが教室に入ってくる。
一瞬ドアに注目が集まる。
シャイなリョウの照れ隠し。

毎日の事なのに、毎日テレている。
決して目立つタイプではないけど、思春期特有の女子の前で格好つけたり、悪ぶってみたりする事もなく、誰の前でも自然体なリョウが大好きだった。

「リョウ おはよ」

平凡な毎日に光が差す瞬間だった。