そろそろ帰らないといけない。帰ってからやらなけばいけない仕事もある。

「ごめん、そろそろ帰るね。仕事溜まってるし」

「そうだね。ところでさ、さや仕事何してんの?」

「なんか俺の話しばっかりで、さやの事余り聞けなかったから」

「幼稚園教諭」
リョウの顔がパッと明るくなった。

「夢叶ったんだ。ずっと言ってたもん。そっかー先生かー」

「すごく似合ってるよ」
自分の事の様に喜ぶリョウ。でも余り言いたくなかった。
リョウは優秀で、御曹司なんて言われていて、
夢は小さい頃からパイロットになりたかったのを知っているから。
そう、あの神社で語り合っていたから。

ー空から地上を見てみたいー

それが、リョウの夢だったから。



「駅まで、送っていくよ。さやの話聞かせて」
駅までの短い時間、私は自分の事を話した。



「ありがとね」

駅の構内、休日なのもあって混みあっていた。
リョウが優しく抱きしめる。

「さやちゃん 俺頑張るから。負けないから」

「うん、リョウならやれるから」
別れは寂しい。
心の中では、このまま仕事も辞めてリョウの側に居たい。夜でも何でも働いて、リョウを支えたい。No.1になって早くこの世界から抜け出させてあげたい。

そんな事ばかり思ってしまう。

空から地上を眺めたかったリョウ。
今、歌舞伎町の地上から星も見えない空を見上げている。
私に出来る事を頑張ろう。心に誓った。