ぽつ、ぽつ、と降りだした雨が制服を濡らす。


手に持っていた傘を開いて、彼女の上に差してやると、


「あ~、今さらそういう感じの要らないからぁ!もう終わりでいいよあたしたち~、ばいばーい」


それだけ言い残すと、彼女は駅に走り去っていった。


(なんかまたよくわからない理由で振られちゃったなぁ)


青い無地の傘を差して歩きながら、独り身になったのに春輝は浮かれていた。


次の女の子はきっと本当の俺を見てくれるはず。

そんな希望を胸に。

そしてその希望は、儚く散るとも知らずに。


歩き出して数分、とあるマンションについた。


ここが春輝の家だった。


部屋の鍵を開けて、風呂のスイッチを押しておいた。

雨に濡れたから制服を乾かさないと、と思ったとき、ふと、手紙のことを思い出した。


朝、下駄箱に入っていた差出人のわからない手紙。


制服の胸ポケットに手をいれて、それを引き抜いた。


『2年D組 片岡 春輝様』


それだけ読んだとき、風呂場からピーっピーっと音がした。


(あ、蓋閉めてなかったや)


春輝はテーブルに手紙を置いて風呂場へ走った。