学校から帰る頃には、もう日はすっかり傾いていた。


あたしは無駄に広い敷地に足を踏み入れる。

あたしの家は豪邸、と言えるほどではないけど外交官の父のお陰かとても大きい。


「ただいま」

大きな家の扉を開けると、丁度兄が玄関を通り過ぎるところだった。



「おかえり、リンカ」


成績優秀、茶色の地毛は柔らかそうな雰囲気を放ち、おまけに性格も優しくてまさに世で言う王子様な兄。

兄の名前は、ナギト。
漢字だと、凪斗って書く。

あたしより二つ上の大学生。


「いつもより遅くない?1人で出歩いちゃ危ないじゃん」


ずい、っと近づいてあたしの顔を覗き込んでくる。

「なんか、部活の勧誘で呼ばれちゃって」


「こんな時期に?変だね」


あんまりイケメンフェイス近づけないで。

いくら兄でもさすがかにドキッとしてしまう。


「それよりこんな所で何してたの?」

これ以上、あの委員会について詮索されないように、話題を切り替える。

ローファーを脱いで、スリッパに履き替えると、兄は白とピンクの封筒の二つを見せてきた。


「手紙を取りに行って戻ってきたんだ。父さん達は今日も帰らないらしいし」


「へぇ。誰からなの?」


父さん達が帰らないのはいつものこと。

二人とも、仕事人間だから。