そんなとき、

パリーーーーンッ

と、硝子が割れる音がした。


学校で、硝子、しかも後ろから聞こえたんだから窓ガラスしかない。


なに?先輩の仲間?


「なっ、なんだ?」


……じゃなさそうだ。


じゃあ一体……。


「えっ!?」


ぐっと、先輩よりも強い力で腕を引かれて、危うく倒れこみそうになる。


「だれ……っ、あ…」


あたしはあたしの腕を掴んでいる人物を見て、さらにびっくりした。


不良だと有名な、飛鳥……斗麻?だったから。


「大丈夫か?」


「えっ、う、うん」


鋭い目付きに似合わない、優しい声だった。


ダメ元で助けてなんて叫んだけど、まさか飛鳥くんが助けてくれるとは。






「くそっ、なんだよてめぇ!!」

そう言いながらも先輩は後ずさりすると、
ドアの鍵を開けて、飛び出していった。


あー、今回はホントに危ないところだった。


「ありがとう、飛鳥くん」


いつものように、作り笑いに近い笑顔を向けると、飛鳥くんはぽけっ、と立っていた。


「飛鳥くん?」


「…須藤リンカだっけ?」


「え?そうだけど……」


なんだ、あたしのこと知ってるのか。


「もっと自然に笑ってみたらいいのに」


「!?」


あたしがホントは優しい性格じゃないって
バレてる?

なんで?


「そんなビビんなくていいって。ただちょっと瞳が悲しそうだなって思って」


「そ、そんなの目の色のせいじゃないの?」


「そう言われると…」

飛鳥くんは、困ったような顔でポリポリと頭を掻いた。


なんか、怖い目付きのわりに優しい表情する人だな。

印象が変わった。


「でも、なんか悩んでたら俺が聞くよ」

「…あ、ありがとう?」


なんて優しい顔で笑うんだ、この人は。

こんな人が不良なんて、嘘なんじゃないの?