雨が降りだしそうな曇り空の下、須藤リンカはカフェでそれを眺めていた。


それ、というのは。


リンカは桜色のマニキュアを塗った爪で、それ――手紙――を開いた。


『2年B組 須藤リンカ様

 あなたはこの度、我々の政策の一員に
 選ばれました。
 つきましては、明日、午後4時半に
 生徒会第二教室へおいでください』


「政策って、なに?」


誰にともなくつい、呟く。

これは今朝、学校について下駄箱を開けたら入っていたもの。

だから誰が差出人かもわからないし、ただの冗談なのかもわからないのだ。


リンカには友達と呼べる人がいない。

理由は……


「ねぇ、そこのキミ一人~?俺達と遊ばな~い?」


俯いていた顔を上げると、耳に重たそうにピアスをいくつもつけた男がいた。

その後ろにもその男の友達であろう人達が3人。


またか、とリンカは思う。


「ごめんなさい、彼氏と待ち合わせをしているの」


にこり、と柔らかく微笑むと男達は残念そうに去っていった。


本当は彼氏なんていないし、待ち合わせなんて大嘘。


男が嫌いだから、断る。