…俺はそんな女の脅しになど目もくれず、そばで行われている戦いに目を向けていた。

どうやらどこかの建物の屋上らしきこの場所一面に、墓場から這い出してきたかのような骸骨の群れがひしめいている。

その亡者の群れと一戦交えているのは、光の矢を放つ少年と…。

「おい、珍妙な目の女」

「ち、珍妙!?」

おかしな右目を持つその女は、素っ頓狂な声を上げた。

「あ、あんた、この目は呪眼っていって、由緒正しいデッドゲイト家の…」

「何故乙女がここであんな化け物風情と戦っている?」

俺は女の説明を無視して尋ねた。

「だからさっきから力を貸せって言ってるでしょうがっ!!!!」

癇癪を起こしたように女は叫んだ。

…余程事態は急を要するらしく、女は早口で簡潔に場の状況を説明する。

「ほぅ…」

俺は特に取り乱す事もなく、女の話を聞いていた。

「あの馬鹿…誰でも彼でも助けてやろうなどと人の好い事を言っているから利用されるのだ…乙女にはいい薬だ」

そう言って俺は背後の金網の所まで歩み寄り、背中を預けた。

「ちょ、ちょっと!」

女がまたがなる。

「手を貸してくれないの!?」

「言っただろう」

俺は腕組みした。

「何故俺がお前達に手を貸さねばならん。さっさと元の世界に戻せ」