瑞希の家を出ると、前には黒塗りのセダンが止まっていて。
後部座席の扉の前にはスーツを来た運転手さんらしい人が立っていて…私を見るなりお辞儀をした…。
「どうぞ。千愛様…。」
そう言って、後部座席のドアを開けた。
奥には夜風千陽の姿が見えて…
隣に座るの嫌だな…と思いながらも私は運転手さんに会釈して、後部座席へと腰を下ろした。
「おせぇんだよ。
何分待たせやがる。」
乗り込むなり、憎まれ口を叩く夜風千陽は、先程の好青年オーラは微塵もない。
正に、外面が学園王子なら…本性は腹黒王子。
「あんたって、二重人格だよね…。」
「あ?二重人格じゃねーよ。
人間は短絡な生き物だからな。
適当に、上っ面を装っているだけで簡単に操れるからな…。」
そう言って馬鹿にしたように笑うコイツはやはり最低なヴァンパイアで…。
コイツの事はやっぱり嫌いだと改めて思う。
「駅前に出ろ。」
「かしこまりました。」
運転席に戻ってきた、運転手さんに夜風千陽が告げた。
どうやら、運転手には腹黒王子のままらしい。
てかなんで駅前?
「どこ行く気?」
「携帯買いに行くんだよ。」
「誰の?」
「お前のだろうが。」
「は?」
「あ?」
うっ…!
コイツの睨みを効かせた目は何度みても怖い。
蛇に睨まれた蛙の気分が、分かった気がした。
捕食する側と、される側の絶対的なひっくり返ることのない関係。
本能的に恐怖を感じ、動く事すら制されてしまうのだと思う。
「でも…私そんなお金ないし…。」
「そんなもん知らねーよ。
お前は俺の家畜…所有物だ。言っただろ?
お前には拒否権なんてねーし、
俺の監視下にいなきゃいけねー事を忘れるな。」
なんて奴なの。
悔しい。
けど、私がコイツに飼われるって決めたんだ。
従うしかない。
私は夜風千陽は駅前の携帯ショップへと向かった。
