「そうだ…。
ルームシェアはしなくても構わない。
彼女は、君がいると思って帰って来る…。
月野さんさえ良ければ、今日だけでも泊まってくれないだろうか?
彼女も君から直接会って、理由を聞けば納得すると思うんだ…。」
そう言って、私に彼は頼む…。
一日くらいなら…。
せっかく、同性のルームメイトができるとよろこんでくれた女の人と気持ちを無下にはできない。
「み…」
瑞希も一緒なら…
一日だけならいいかな?と答えようとしたら…
「あっ!でもお友達さんの家に今はいてて、今日は見学って言ってるんだよね?
親御さんが心配するかな?
お友達さんから、親御さんに上手く言ってくれるかな?」
「…!!!」
今、瑞希に話しかけた夜風千陽の瞳…。
朱くならなかった!!?
血の色みたいな!!!
私は言葉を失う…。
「もっ!もちろん!!!
母達には私から言っときます!
千愛!今日はここにいなよ!
明日また学校でね!」
そう言って、瑞希はなにか急ぐように夜風千陽の家からお邪魔しようとする…
「え?!ちょっと待って!瑞希!!
瑞希も泊まってよ!
ママさんには電話でいーじゃん!」
「なんでよ。千愛は制服だけど、私…私服だから明日学校困るし!
せっかくなんだから。ねっ?
そしたら先輩!今日はありがとうございました。
千愛をお願いします。」
そう言って、そそくさ出ていこうとする瑞希。
「えっ!でも…」
「泊まるよね?」
「はい。」
まただ!!!
夜風千陽の問いに…思ってもいないのに肯定の返事を口走っていた。
なんなの。
この人のもつ威圧的な雰囲気のせいで断れないの?
怖いよ…。
「そしたら先輩!失礼します!
ちなみに…千愛は彼氏いません!
彼氏絶賛募集中です!!!
お邪魔しました。」
「なっ!!!」
瑞希を引き止める隙もなく…
瑞希は、言う必要のない事を言って逃げるように帰ってしまった。
瑞希を追いかけようと靴を履き、玄関に立つ私の前のドアは、瑞希が出ていき…
―バタンッ
音を立て閉まって閉まった…。
「残念だったね…
…千愛ちゃん?」
…千愛ちゃん?
振り返るとそこには、さっきまでの涼しげな好青年だった夜風千陽はおらず…
悪魔のような、片方の口角だけを上げてニヒルに微笑み、
腕を組んで壁にもたれかかった…
夜風千陽…
