やっと終わって、私は教室へと瑞希と戻っていた。
「あー今日も王子様はかっこよかったなー。」
「確かに顔はいいね。」
「なっ!!
王子にそこまで興味ないの全校生徒で千愛!
あんただけだよ!
千愛はお父さんの顔見慣れてるから、きっとイケメンに免疫がありすぎるんだねー」
確かに…
決してファザコンの欠片もないが、ダメ親父の唯一褒めれる所…
それは容姿だ。
気持ち悪いことに、物事がついた頃から見た目年齢が全く変わっていない。
年齢を聞いても540才とかふざけた事しか言わないから、実年齢は知らないが単純に考えて…40近いはずなのに、どう頑張ってもそこらへんのチャラャラした大学生にしか見えない。
一緒に歩いてたらカップルに間違えられ、
「街角!ベストカップル」的な雑誌に載せる写真を撮らせてくれ。と頼まれ…
とても不快な気分にされたことはまだ記憶に新しい。
顔がいいから、女がいくらでも寄ってくるから、女に貢がせ、その金をギャンブルに注ぎ込む…最低最悪のヒモ男だった。
私はダメ親父の事を、思い出しげんなりした。
「千愛も、そのお父さんの血を引き継いで…神がかった美貌だもんね。
千愛と王子が付き合ったら、世界…いや宇宙一のベストカップルだよね!」
は?
私とダメ親父が似てる?
本気でやめて頂きたい!
あんな年を取らない妖怪男と一緒にされたくない。
「冗談やめてよ。
あんなんに似てるなら…私自殺するわ」
「またそんな事言う。
ほんと千愛は自分のこと分かってないんだから…。
千愛は男嫌いで、男子に厳しいから誰も寄ってこないだけで、学園王子が生徒会長なら学園王女は千愛!あんたよ!!!」
なぜか誇らしげに言う瑞希。
私は相手にするのも面倒くさく、ため息をついた。
「千愛が影でなんて呼ばれてるか知ってる?」
「…?」
「高嶺の雪の女王!!!」
なんだそれ…
某世界的有名アニメ映画のパクリのような呼び方は…。
「なんで高嶺?雪?女王?」
「そりゃー、
声をかけるのも躊躇する完璧なまでの美貌とスタイルはまるで高嶺の花。
真っ白で初雪のような綺麗な肌。
誰も近寄らせない高貴な女王様のようなオーラ。
そして何より男子に注ぐ、凍らせるような冷たい視線。」
見事なまでに「高嶺」「雪」「女王」の説明をわかり易くしてくれたが…
え。何。
褒めてるつもり?
けなされてない?
特に最後…
私の目からはビームか何かが出ているのか??
女王は女王でも、プリンセスを陥れる悪魔のような女王のほうじゃん!それ。
「…全然嬉しくない。」
「えぇー!なんでー?
私は千愛が自慢の親友だよ?
綺麗で優しくて、かっこよくて、賢くて!
まさに才色兼備!大和撫子!
女の子には優しいけど、千愛自身がクールというか口数が少ないから皆、遠巻きに千愛のことみてるけど、女子は皆憧れてると思うよ?
私は皆にもっともっと千愛の素敵な所を知って欲しいな。ってほんとに思うよ。」
そう言う、瑞希の笑顔はほんとに自然で…
けなしてるつもりは毛頭もなく、切に私を好いてくれていることがわかる。
「ありがとう。
でも私は瑞希が私を分かってくれてるだけで充分幸せだよ。
それに私は瑞希の方が魅力的だと思うし羨ましいよ。」
小さくて、細くて華奢で…
笑顔が可愛く人懐っこい。
誰もが守ってあげたくなる感じ。
老若男女に好かれ人懐っこい人を惹きつける魅力をもっていて…
瑞希の周りはいつも笑顔がいっぱいで…
明るく可愛い、私の持っていないものを持っている、瑞希が羨ましいし愛しく思う。
「えへへ。
なんか千愛にそんな風に言われると照れるな。
お互い、ないものねだりなのかな?」
そう言って照れて笑う瑞希が可愛くて、私もつられて微笑んだ。
