＊＊＊


　七月も中を過ぎてあと何日かでいよいよ夏休み。

　各教科の授業では先生達が夏休みの宿題について話にふれたり、休み中の補習について軽く話したりとだんだんみんなの気持ちが夏休みに向かっているような気がする。

　宿題の量や補習について嫌そうな顔をしたり声を出したりする人はいるけれど、それでもやっぱりみんながそわそわしているような気がした。

　梅雨明けが近い今日の天気は晴れ。お昼休みのトイレからの帰り、一人で廊下を歩きながら私は綺麗な青色を思い出していた。

「……──」

「……？」

　廊下の途中で誰かに呼ばれたような気がして私は後ろを振り返る。

　近くを歩いていた生徒が何人か横を通り過ぎていくけど誰も私を呼んだわけじゃなさそう。

　気のせいかと思って教室がある方へ向きを変えると、バタバタと近くの階段から足音がだんだん近づいてきた。

　階段の下の方からは「階段を急いで上るんじゃない！」と先生の声が聞こえてくる。

　先生に返すように謝っている声は聞き覚えがあって、私は足を止めたまま階段を上ってくる人を待ってみた。

　先生に注意されて静かな足音で階段から廊下に姿を見せたのは相原君。

「ちょうどよかった！　三崎を探してたんだよ」

　相原君はパッと嬉しそうに笑って急ぎ足で私のところに歩いてくる。

　相原君は一枚の紙を手に持ち、その紙を私に見せるように腕を高く上げた。

「アルバイト許可書？　あっ、もしかして夏休み中の……？」

　前に相原君と話した時のことを思い出して聞くと相原君は勢いよく頷く。

　その顔はとても嬉しそう。