総合優勝はD組に、C組は二位となって体育祭は終わった。

 閉会式の後にその場で共通の帰りのホームルームがあったけどそれもいくつかの連絡で終わって生徒はグラウンドから離れていく。

 その中でグラウンドの一カ所でみんなに囲まれている相原君には話しかけるどころか近づくこともできなくて、私は香奈恵ちゃんと一緒に荷物をとりに教室に行こうと校舎に入った。


***


「惜しかったねー」

「うん……」

 点差があまり開いていない上での結果だから去年よりも悔しさが大きい気がして、香奈恵ちゃんに曖昧に頷いた。

 去年私と香奈恵ちゃんがいた組は上位と点差が大きくて、後半は今年ほど盛り上がっていなかったような気がするなぁ……。

 香奈恵ちゃんと話をしながら階段を上って教室に入ると生徒が何人かポツポツといて、「お疲れー」と声をかけてくれて私と香奈恵ちゃんも返事をしていく。

 鞄を持って香奈恵ちゃんの席のところまで歩いていくと香奈恵ちゃんはスマホの画面に指を滑らせていて「あっ」と何かに気づいたような声を出した。

「香奈恵ちゃんどうしたの?」

「葵ちゃんごめん!」

「え……」

 突然謝られて言葉につまる私に香奈恵ちゃんは顔の前で両手のひらを合わせてみせる。

 どうしたんだろうと思っていると香奈恵ちゃんは机の上に置いていた荷物を鞄の中に素早くしまって鞄を持ち上げた。

「用事ができて急いで帰らなくちゃいけなくなったの」

「そうなんだ。それじゃあ急いで帰ったほうがいいよ」

 家族の人が待っているかもしれないしとそう返すと香奈恵ちゃんはもう一度「ごめんね!」と残して慌てたように足音をたてて教室を出て行った。