「急に泣きそうな顔するから俺と帰るのがそんなに嫌だったのかなーって思ってさ……」

 つかんだ腕を離した相原君は足を止めた私の前に歩いて来てじっと見上げてくる。

 確かに緊張しているし男子は苦手なほうだけど、相原君が嫌いだから泣きそうになったわけじゃない。

「そういうわけじゃないよ! ……ただ、相原君こそ私と帰っていていいのかなって思って……」

「え……?」

 こてん、と不思議そうに首を傾げる相原君。

 私は右手をギュッと握って言葉を続けていく。

「相原君のほうこそ私みたいな背の高い女子と歩いていて嫌じゃないの……?」

 ちょうど今横を通り過ぎて行った一人の男子に去年のことをまた思い出す。

 整った顔立ちで切れ長の目が印象的な彼は去年の私のクラスメイトで隣の席だった。

 勉強も運動も得意な彼はたくさんの人に人気があって私ともすごく気軽に話してくれていた――……そう私は思ってた。

 だけどある日の放課後、教室から出ようとした私は廊下から聞こえた話し声で彼の本音を知った。

 誰かと話していた彼は確かに言っていたんだ。「三崎みたいなデカい女、ありえねぇよな」って。