そろそろ始めるのかなと立ち上がって動き始めた相原君達を目で追っていると四人が私と香奈恵ちゃんの前で立ち止まった。
リーダーでもある先輩がキリッとした表情の中で口端を上げた不敵そうに見える笑みで私と香奈恵ちゃんの前に右手を伸ばしてくる。
何だろうと聞こうと思ったら香奈恵ちゃんが何も言わずに立ち上がって先輩と握手した。
「頑張って下さい!」
「ああ」
香奈恵ちゃんとの握手が終わった先輩が今度は私の近くに手を伸ばして一歩近づいてきて、私は立ちながら先輩と香奈恵ちゃんを交互に見るしかできない。
「あの……」
「ああ、いきなりごめんな。これは一位をとった生徒に握手をお願いする願掛けなんだ」
「願掛け、ですか……?」
「去年もオレと相原は同じ組で同じようにリレーの出場者でさ。リレーの前に相原がやってたんだ、同じ組で一位をとった人にあやかるんだって。今年はオレ達もそれにならってみようかと」
「だから握手してもらえると嬉しい」と続けて目を細めた先輩に私は戸惑いながら恐る恐る右手を伸ばしていく。
緊張するし香奈恵ちゃんみたいに上手に応援の言葉は出てこないけれど、私なんかが少しでも力になれるのなら。そう思いながら握手した先輩の手は大きくてゴツゴツしてる。
先輩の手が離れるともう一人の先輩、一年生と続いて最後は相原君。
ペアで出場した時のことが頭に浮かんで、一位をとれて嬉しい気持ちと手を繋いだり抱き上げられたりして恥ずかしい気持ちが顔を出す。
相原君の目を真っ直ぐ見れなくて私は彼の頭位の位置を見つめた。