朝から続いた体育祭も女子のリレーが終わり、いよいよ一番最後の種目の男子リレーだけに。
一度みんなが各組のテントに戻ってここまでの総合得点と順位がアナウンスされ、私達のC組は二位。そして一位はD組で、男子リレーの得点を入れて考えても優勝はC組とD組の争いになりそう。
隣のD組のテントから聞こえる会話が気になって顔を動かしてそちら側を見る。するとC組のテントから近い場所に座っていた野中君がこっちを見ていた。
「香奈恵ちゃん。野中君がこっちを見てるよ?」
小さな声で横に座っている香奈恵ちゃんに声をかけると、香奈恵ちゃんは体を動かして野中君のほうを見る。だけど香奈恵ちゃんはすぐに体を戻して野中君を見るのを止めた。
香奈恵ちゃんは眉を寄せてムッとしたような表情で小さなため息を一つ。
それから男子のリレーに参加するC組の生徒が集まっている少し横のほうに顔を向けた。
「野中くんが同じ組なら大声で応援するけど今は敵チームだから我慢我慢!」
「それでいいの……?」
好きな人なのにと思って聞いても香奈恵ちゃんは笑って「好きな人でも勝負は別なの!」と言う。
「今はC組の優勝を祈らなくちゃ」と両手を合わせる香奈恵ちゃんに「勝てるといいね」と返して私も両手をぎゅっと合わせて祈るように握る。
C組から男子リレーに出るのは一年生が一人、二年生は相原君。それからあとは三年生が二人。
D組は少なくとも野中君が出場すると思うし、他の組の結果によってはC組が二位より下の順位に下がる可能性もあるからどうなるのか分からない。
少しでもいい順位を残したいのは他の組も同じだと思うし、優勝の可能性があるならやっぱり期待してしまうから。