「よし、これで最後だ!」
相原君はたどり着いて正面に位置する地面に置いてあった封筒をしゃがんでとり、体を戻しながら封筒を切っていく。
中の紙を開いた相原君の表情はみるみる笑顔に変わり、「よっしゃー!」と叫ぶように言った。
「俺達ついてるぞ!」
「え……?」
「この紙を持ってじっとしてて」
封筒に入っていた紙をわたされ、どんなことが書かれてたのかなと見ようとした私。
けれどその前に体が不安定になる感覚に私は気の抜けたような変な声を出してしまった。
「相原君……っ」
「このまま走ってゴールするから!」
「え……っ!」
――相原君は私を横抱き、つまりお姫様抱っこと言われる形で私を抱き上げて走り出す。
私のほうが背が高いのに相原君は私を落とすことなく走る走る。
普通に走るよりは遅いはずだけど先に着いていた先輩達が追い抜いてくることはなくて、私と相原君は先頭でゴールラインを通り抜けた。
パンッと響かせたピストルの音、わっと耳に入ってくる人の声。
相原君に下ろしてもらった後、私は運ばれただけなのに胸がドキドキしてぼんやりしてしまう。
「指示を確認します……――はいっ、最終の一位はC組のお嬢様とにゃんこペアです! とても可愛らしい二人が一位となりましたー!」
進行状況をアナウンスしていた人が私が持っていた紙を見て声を張り上げるように話す。
私と相原君は目が合って、二人揃って頭に向けて両手を動かした。
すっかり忘れてたけど猫娘の変装してるんだった……!
ゴール位置から少し離れてカチューシャを外して、ジャージの上にはいていたスカートを脱いでいると最後の障害物に私達より先に着いていた先輩達のペアがゴールイン。
「激甘の後にグルグルバット……」
「地獄だ……うっ……」
先輩達はフラフラしながら口に手をあててとても気持ち悪そう……。
思わず私も猫の手風手袋をつけたまま口に手を近づけてしまった。