二人そろって固まってしまうと他のペアが「お先にー」と次の障害へと走っていく。
すると相原君がバッと勢いよく私の手にあった猫耳カチューシャを持って私の顔に近づけてきた。
「我慢だ三崎! 俺ならヤバいけど三崎ならいけるから!」
「え……っ」
「頼む! 一緒に早くゴールしてくれ……!」
女の子の格好で見上げてくる相原君に私はハッと思う。
相原君だって女装なのに頑張って着替えたんだからこのまま私がつけなかったら一番最後になっちゃうんだ――……。
私は震える手でカチューシャを受けとって頭につける。
泣きそうになりながらスカートをジャージのズボンの上からはいて猫の手風の手袋を両手につけた。
変装に戸惑っている組が他にもいて、私達は四位に順位を落としながら第一の障害を抜けた。
少し走って第二の障害は計算問題が三問。
学年別に問題が用意してあってどちらが答えてもいいと書かれている。
「あー分かんねぇ……。三崎分かる?」
問題用紙を睨むように見ていた相原君が顔を上げて聞いてきたので私は三問ともにさっと目を通す。
問題はどれも習って間もない数学の問題だからこれなら私でもできそう。
「……うん、この問題なら解けそうかな……」
「本当か? それじゃあ頼む……!」
「頑張るね」
さすがに猫の手の手袋じゃ鉛筆が持てないので近くに立っている先生に片方の手袋を外していいかを聞いて許可をもらう。
両隣で同じように計算問題を解いている他の組が気になりながらも私はギュッと鉛筆を持つ手に力をこめ、できる限り急いで計算式を書き進めて答えを出していく。
三問解き終わって近くに立っている先生に答え合わせをお願いすると先生はニッコリ笑って「全問正解です」と第二の障害突破を告げてくれた。
「よし! 次に行こうぜ!」
「うん……っ」
二位に順位をあげられたことが嬉しくて、私ははずむような声で返事をして相原君の後を追いかけた。

