「運動が苦手でも大丈夫! 根性でどうにかなる競技だから!」
「根性、ですか……?」
「そうよ! 根性と運があればどうにかなるから頑張って!」
「おい。後輩にプレッシャーかけるなよ」
リーダーの先輩が近くに歩いてきてサブリーダーの先輩の肩を軽く叩いて困ったように笑って言う。
「だって頑張ってほしいじゃない! その代わり私も死ぬほど女子のリレー頑張るから」
「それはそうだけどお前みたいにみんながスポーツ大好き人間じゃないんだから……。ごめんな? コイツ、スポーツ好きな上に負けず嫌いでさ」
「あ、いえ……」
否定すると彼は目を細めて私の頭に手を伸ばす。
ポンポンと軽く叩くように頭をなでられて体に緊張がはしる。
佐藤先生になでられたことはあるけど年の近い人――しかも同学年よりも会うことが少ないと思う先輩になでられるなんて。
どうしようと動けないでいると「葵ちゃん」と呼ばれて右手を後ろに引っ張られて緊張が少しとける。
待ってくれていた香奈恵ちゃんが私の隣にきて先輩達を見た。
「大丈夫です! 葵ちゃんも相原くんも頑張ってくれますから! ね?」
「う、うんっ」
笑顔で聞いてくる香奈恵ちゃんの勢いにつられて頷くと先輩達はうんうんと頷いて笑う。
「ありがとう! 頑張ってくれたら嬉しいよ」
「本当に無理はしなくていいからな?」
「はい……」
期待をこめた目で見られているような気がして、私は曖昧に返事をした。

