「それじゃあ頑張ってくるね!」
「香奈恵ちゃん頑張ってね」
競技が進んでいって次は二年女子の短距離走の番に。
短距離走は各クラス男女四人ずつ。同じクラスの女子で短距離走のみは香奈恵ちゃんだけだった。
立ち上がった香奈恵ちゃんと他の三人は同じ組の人達に「頑張れー」と次々に声をかけられて、それに笑顔で返しながらテントを離れていく。
ふいに強く吹いた風が通り抜けるのを肌で感じて、香奈恵ちゃん達が走る時に追い風になったらいいなと思った。
***
香奈恵ちゃんは最終の組に入れられ、レーンの並び順は真ん中。
他の人は二位、四位、三位とゴールして最後の香奈恵ちゃんに期待が高まる。
クラウチングスタートの構えをとる四人、ピンと張りつめた空気の中でピストルの音が鳴り響いた。
「坂本頑張れー!」
「いけー!」
「坂本さんファイト!」
みんなが大きな声で応援する中に混じって私も自分なりに声を出して香奈恵ちゃんの名前を呼ぶ。
前半二位の位置で走っていた香奈恵ちゃんは後半スピードが上がり先頭を走っていた人と並ぶようにゴールした。
どっちだろう?
ゴールの位置はテントから見えにくいからはっきりとは分からない。
両手を合わせるように握って香奈恵ちゃんが一位でありますようにと祈る。
少しの時間が経った後、放送係のアナウンスを始めた声がグラウンドに響く。
「最終組の短距離走は僅差でC組の坂本さんが一位となりました」
二位からのアナウンスも続く中、私達のテントは喜びの声があふれる。
まだまだ体育祭は途中だけど、香奈恵ちゃんが一位になったことで私達C組は得点の合計が一位になった。
「香奈恵ちゃんおめでとう……っ」
嬉しそうなみんなを眺めながら私もじわじわと嬉しい気持ちが生まれて小声で呟いた。
香奈恵ちゃんが戻ってきたら同じ言葉を伝えようと思いながら。