六時間目が終わって自分達のクラスへと向かって歩いていく人が流れている廊下。

 香奈恵ちゃんは同じ種目に出る人と少し話をしていくからということで私は先に話し合いをした教室を出ている。

 少し前に相原君が一人で歩いているのを見つけて歩く速さをあげた。

「相原君」

「――三崎?」

 追いついて名前を呼べば見上げた相原君が呼び返してくれる。

 たくさんの人が近くを歩いていてもみんなそれぞれ話しながら歩いているから相原君に声をかけられるチャンスだと思った。

 走ってる途中で声をかけてくれたお礼を今日中に伝えたかったから。

「あの、今日走ってる時に声をかけてくれてありがとう」

「え? ああ、お礼なんていいって! 俺が誰かがすぐ前とか後ろにいるって強く意識すると速く走れるから試しただけだからさ」

「相原君が引っ張ってくれたおかげで前より速く走れたから……」

「役に立てたならよかった。体育祭頑張ろうな」

「……うん」

 照れたように笑う相原君に私は頷いて去年よりいい順位になりたいなと思った。