先生も私と同じ方を見て困ったように笑った。
「相原はまた居眠りをしたようだな」
「前にもあるんですか?」
声の音量を下げた先生に合わせて私も声を小さくして聞くと先生は頷いて言葉を続けていく。
佐藤先生によると相原君は一年生の時にも一度南谷先生の授業で居眠りをしてしまったことがあるらしく、今回で二度目。
しかもまだ進級してそれほど経っていない五月で今月中に中間テストがあるから南谷先生は渋い顔をしていたと先生は続けた。
先生と話をしながら、下げていた頭を上げた相原君の様子をうかがうと引きつったように見える横顔があって気まずそうな雰囲気が伝わってくる。
私は居眠りではないけれど、去年のテスト前日に体調を崩してあまり見直しをしなかった教科があって。
テスト本番を迎えたら一部の問題がきちんと解けなくて平均点を下回ってしまった。
その後に先生と話をした時は何となく気まずかったのを覚えてるから、居眠りはよくないと思うけど気まずい気持ちはちょっと分かるかもしれない。
ぼんやりと自分のことを思い出していたら、もう一度頭を下げた相原君が南谷先生の所を離れて出入り口の近くにいた私と佐藤先生の所に向かってきた。
「三崎」と私の名前を呟いた相原君の目が見開かれて、だんだん困ったような笑顔に変わる。
「カッコ悪い所を見られたな……」
「おぉ、可愛いと言われる相原もやっぱり男だな」
佐藤先生は笑顔で相原君の肩を叩き、相原君はちょっと怒っているような表情を浮かべて先生の手から逃げるように体を動かした。
「先生やめて下さい。背が縮んだらどうするんですか」
「なぁに、まだ伸びるかもしれないんだから怒るなって――っと、もうこんな時間か。俺は部活の様子を見てくるから二人とも気をつけて帰るんだぞ」
ふと職員室の壁に備えられている時計を見た佐藤先生はそう話を終わらせて私と相原君に下校を促した。
私と相原君はお互いちら、と目を合わせて二人で職員室から退出した。

