他の人にスタートの合図とタイム計測をお願いして私と相原君、他に同じクラスの人が二人スタート位置に並ぶ。

 私は中距離走をしているほうに一番近くて隣に相原君が立った。

 男の子と一緒に走るなんて久しぶりでだんだん緊張してくる。

 相原君より外側に並んでいる女の子に顔を向けてみたら彼女は笑ってくれた。

「三崎さん、一緒に頑張ろうね」

「あっ、うん」

 まさか言葉をかけてくれるなんて思わなくて返事がつまった。

 「そろそろ始めるよー」と聞こえた声に慌てて前を向いてスタートの姿勢をとる。

 私達のまわりが一瞬しん、と静かになったそのすぐ後に「よーい、どん!」と張り上げたような声が響いた。

 一斉に駆け出す足音が耳に届いて私は必死に足と手を動かす。

 真ん中近くで息が苦しくなって速さが落ちてきてしまう。

 やっぱり運動は苦手だと考えていたら隣で走っていた相原君がチラリとこっちを見た気が。

 気のせいかな?

 そう思っていたらもう一度チラリとこっちを見た気がした相原君が「頑張れ」と言ってくれて。

 いつもとは違う真剣そうな声に諦めかけていた気持ちにブレーキがかかる。

 あっという間に後ろ姿しか見えなくなった相原君を追いかけるように必死に体を動かした――。