「さっき香奈恵ちゃん達と反対側のところで野中君が練習してたから四時間目に行ってみたらどうかな……?」
せっかくの機会だからと思いきって香奈恵ちゃんに言ってみる。
迷惑だったかなとドキドキしていると香奈恵ちゃんはとても嬉しそうに笑った。
いつもとは違うような笑顔に野中君のことが好きなんだなぁと思う。
「でも、相原くんの後に葵ちゃんと走りたいし……」
香奈恵ちゃんはコンクリートの地面を見つめるように下を向く。
香奈恵ちゃんの気持ちはすごく嬉しい。
だけど合同授業の中で他のクラスの特定の人と一緒にいられることは貴重なんじゃないかと思うから。
「時間があったら練習できるし、今日じゃなくてもまた今度一緒に練習してくれたら嬉しいよ」と返して自分なりに香奈恵ちゃんの背中を押した。
***
「やっと一緒に練習できるな」
「よろしくね……?」
四時間目が始まると短距離走の練習場所はレーンの内側がいくつか減って中距離走にあてられた。
香奈恵ちゃんと別れて三時間目の時と反対の練習場所に行くと相原君が先にいてニコニコ笑っている。
香奈恵ちゃんから結構な回数を走ったと聞いていたけど相原君は疲れているようには見えなくて。
私だったら一回でも疲れちゃうからうらやましい。
「早く走ってみようぜ!」と早歩きし出した相原君に私は慌ててついて行った。