頷いた野中君に先生はにかっと笑い、そのまま違うところに向かうのかと思いきや私と野中君の頭に手を置いてポンポンとまた軽く叩くようになでてきた。
だけど野中君は髪の毛をクシャクシャにするように勢いよくなでられて止めるように声をあげている。
「先生止めてください」
「はははっ! こうすると普段はいい男も可愛く見えるな」
先生の手をつかんで離した後、野中君はあいている手で髪を直す。
先生はその様子を見て笑い声をあげながら今度こそこの場を離れていった。
「いい先生なんだけどこういうところは少し困るよ」
頬を少し赤くして恥ずかしそうに笑う野中君がちょっと前の印象とは違うように見えて、彼の意外な一面を香奈恵ちゃんが見られる機会があればいいなと思う。
その後、タイム計測と時々間に休憩をはさんでを繰り返し、授業終了のチャイムが鳴るまでそれは続く。
途中で香奈恵ちゃんと相原君がいる方を見てみたけれど二人はまだ走っているみたいで、香奈恵ちゃん達が走っている中話しかけにいくのもタイム計測を変わってもらうのも申し訳なかったからキリがいいところまでそのままタイム計測をしていた。