相原君は今日も笑顔で


「まあリレーは相原とクラスが離れているから分からないか。去年は第三走者とアンカーに二人がいて逆転勝利だったがな」

「相原君も足が速いんですか?」

 元気で運動神経がよさそうなイメージはあったけど、近くにいた相原君が話題になるほど足が速いのならすごいなと思う。

「全学年なら野中の次とはいかないが、同学年なら野中の次に速い」

「そうそう! 今年も野中と相原の二人が揃ってオレ達のクラスにいたらよかったのに」

「もしかしてそのことを理由に二人を別のクラスにしたんですか?」

 野中君と一緒に走ったうちの二人が佐藤先生に次々と言うけど先生は笑って否定した。

「偶然だ偶然。学年が上がって今年の新入生が速い場合もあるんだからそれを理由にクラスを離す訳ないだろ? ――ほら、次の組を始めるからみんな戻れ」

 この話はおしまいとばかりに先生が促すとみんなはそれ以上何かを言うことなくスタート位置へと向かって歩いていく。

 だけど先生は一番最後に歩いていく野中君を呼び止めた。

「どうしました?」

 不思議そうに戻ってくる野中君に先生は記録用紙を持つ手を動かす。

 風に吹かれて紙が少しめくられる音を聞いていたら先生は近くに戻ってきた野中君に記録用紙を差し出した。

「他のところの様子を見てくるから記録を頼めるか?」

「かまいませんが……」

「それじゃあしばらくの間二人で頼むな」