香奈恵ちゃんや相原君が向かった場所とは反対側で練習をしている人のところにたどり着くと、隣のクラスの人が多い印象で一気に緊張してくる。
同じクラスの人を探してみたけれどほとんど話したことのない人しかいない。
その中にテスト返却日に話しかけてきた明るい茶色の髪をもつ男子もいて思わず歩く速さが遅くなる。
出来るだけ距離があくような位置を通って行こうと歩くも、ジャリジャリとグラウンドの砂混じりの土を踏む音で向こうが気づきそうでさらに緊張する。
――彼がこっちを向いた。目があったような気がした瞬間、彼の姿は別の人の姿が重なって見えなくなった。
「あれ、三崎さんだよね……?」
「あ、野中君……?」
姿が重なったのは野中君だった。
そういえば隣のクラスだって相原君が前に言っていたけど、こうして授業中に近くで会ったのは初めてな気がする。
「覚えていてくれたんだ」
「うん」
口元を少しゆるめたような静かな笑顔が似合っていて、相原君の笑顔が太陽みたいなら野中君の笑顔は月みたいな印象。
こうやって近くで会ったのは二回目なのに、広人さんに似ているからか少し親しみがわいてしまうから不思議だ。

