「三崎ー!」

「葵ちゃーん!」

 先生に聞いてみようかなと足を動かすと後ろから私を呼ぶ二つの声と近づいてくる足音。

 足を止めてくるりと振り返れば相原君と香奈恵ちゃんが並ぶように走ってきた。

「一緒に練習しよう!」

「え……っ」

 少し息をはずませた二人の元気な声が重なって響く。

「一緒に百メートルを走る練習しよう?」

 香奈恵ちゃんが私の右手をクイクイと引っ張って見上げてくる。

「いいや、同じ種目に出る俺と練習しようぜ!」

 相原君が私の左手をグイグイと引っ張って見上げてくる。

 二人にじっと見られてどうしようかと考えていたら二人はふとお互いの顔を見合った。

 それと同時に私の手をつかむ手が強くなる。

「相原くん。葵ちゃんはわたしと練習するから後にしてくれない?」

「それなら坂本こそ後にしてほしいんだけどな。俺と三崎は同じ種目に出るんだし」

「そうだけど競技の内容が分からないんだからわたしと練習したって同じでしょ?」

「……それじゃあ俺と坂本で競争して速いほうが三崎と先に練習するのはどうだ?」

 私の左手を離した相原君に香奈恵ちゃんも私の右手を離して、少しの間の後に「よしのった!」と声をあげた。

「それなら早く決めてこよう。時間がなくなっちゃう!」

「そうだな。三崎はちょっと待ってて」

「えっ」

 二人は私が戸惑っている間に人が集まっているうちの一つの場所に走っていってしまった。