「あっ……」
白紙を願って開いた紙の中央には赤いインクで花丸が書かれていて私は小さな声をだしてしまう。
声に反応したのか箱を持っていない私に近くの人の視線がささる。
当たったことを言わないと。キュッと唇に力をこめてから息を吸う。
声を出そうとした瞬間、近くで「俺当たりましたー」と声が聞こえて私は中途半端に口を開いたまま横に顔を動かした。
すると相原君がくじ引きの紙を持った腕を高く上げて振っていて、まわりから喜びの声があがる。
「おっ。去年の学校祭は人形(ドール)で今度は盛り上げ役のヒーローか?」
「やるからには一番目指します!」
「おお! やる気があふれてるな」
佐藤先生のからかうような言葉に相原君はニッと強気そうな笑みで宣言を返す。
すごいなぁとポカンと口を半開きにしたまま相原君を見ていたら彼がこっちを向いて目を丸くした。
「三崎? ――あれ、もしかして三崎も当たり?」
「え? あ、うんっ」
ガタガタと椅子を動かしてこっちを向いた相原君に私は引いたくじを手に持ったまま相原君のほうに近づける。
教室がしんっと静まった――その一瞬後。
わっと声が教室に広がってとても賑やかになる。
手を叩いている人もいて、たくさんの視線が恥ずかしくて私はうつむいてじっと自分の手を見た。

