去年の体育祭をぼんやりと思い出していたら始業のチャイムが鳴ってしまった。

 「わたしも葵ちゃんも大変じゃない競技を選べるといいね」と少し急いだ口調で残して香奈恵ちゃんは自分の席に早足で戻っていく。

 慌てて席に着く近くの人をぼーっと見ながら、私は不安な気持ちを小さなため息にのせてそっと吐き出した。


***


 佐藤先生が来て号令が終われば先生は早速競技の希望について話し出す。

 短、中距離、リレーなど記憶にある競技の名前が先生の口から告げられる中、一番最後に「今年も内容が毎年変わる競技があるぞ」と締めくくった。

「またあるの?」

「去年出たから今年は出たくないです!」

 みんなが色々言うと先生は困ったように笑って「みんなが楽しむことを目的に始まった競技らしいからなぁ」と返す。

 そして先生は教室に入ってきた時に手にしていた箱を、教卓の上で片手でつかんで揺らす。

 中から聞こえる音と箱の上のところにあいている穴から想像はついて嫌な予感。

 先生は箱を持ち上げてニヤリと意地悪そうに笑った。

「最初にくじ引きでこの競技の出場者を決めるからな」

 「えー!」と教室中に響きわたった声に先生は肩を揺らして教卓からゆっくりとした歩き方で離れる。

 そしてドアに一番近い列の一番前の生徒の机の上に持っていた箱をとんと置いた。

「一枚引いたら後ろ、または前に箱を回すこと。印がついていたら当たりだからな」

 この競技は男女混合ありでクラスによっては男子だけだったり女子だけだったりもする。

 速さを競うだけなら男子が有利に思えるけれどこの競技は速さだけでは一位になれなくて。