香奈恵ちゃんと歩いているとよくまわりの人が香奈恵ちゃんを見ているのに気づく。
可愛くて明るい香奈恵ちゃんが気になる人は多いんじゃないかなって思う。
「葵ちゃん気づいてないの?」
「えっ?」
じーっと見上げてくる香奈恵ちゃんを不思議に思いながら見つめ返す。
何秒かそのまま時間が過ぎて、香奈恵ちゃんはへにゃりと困ったように笑った。
「まあそんなところも葵ちゃんの魅力の一つかな」
「香奈恵ちゃん?」
意味がよく分からなくて名前を呼んで聞いてみる。
だけど香奈恵ちゃんが「そのままの葵ちゃんでいてね」と言った後に話を中間テストのことに変えてきたのでそれ以上聞けなくて。
ちょっとモヤモヤして気になったけど私は胸にしまいこんだ。
***
六時間目は国語の授業。
テストの返却と今日最後の授業だからかみんな席に座っていてもソワソワしているように見える。
南谷先生が来て間もなくチャイムが鳴ると始まる号令。
号令が終わるとすぐに先生が紙の束を封筒から取り出して教卓に置いた。
「それではこれから中間テストの答案用紙をわたしていきます。平均的などはわたした後に発表しますので――」
出席番号順に名前が呼ばれ、一人一人答案用紙を受けとっていくみんな。

