「今坂本と話してるやつと知り合い?」
さっきまで笑顔だったのに今は眉が寄ってちょっと機嫌が悪そうな相原君に私は首を横に振った。
「ううん。私は初めて会うよ。香奈恵ちゃんが知ってるみたいで……」
香奈恵ちゃんの好きな人とは言えないからそこはあやふやにしたけれど、相原君は「そっか!」と笑顔が戻ったので一安心。
「野中って言うんだ。去年俺と同じクラスで今年は隣のクラスなんだけどさ、帰りに生徒玄関近くで会って一緒に買い物に来たんだ」
「そうなんだ……」
「ちなみに生徒会で書記。すごいよな」とつけ足すように続けた相原君に私は頷く。
生徒会のメンバーと言えばどうしても三年生のイメージが強いからすごいと思う。
野中君は香奈恵ちゃんと少し話すとこちらを向いて相原君の名前を呼ぶ。
「真琴」と呼ばれた相原君は「おう」と返して右手を上げて振った。
「買い物も終わったしそろそろ帰ろう」
「そうだな。それじゃあ三崎と坂本またな!」
「……うん、また学校で」
歩き始めてブンブンと音がしそうなくらい勢いよく右手を振る相原君に、私はバイバイの意味をこめて少しだけ手を振り返す。

